「時代の臭いをコピーできるのか?」(ALWAYS 三丁目の夕日)


映画「ALWAYS 三丁目の夕日」を観た。
昭和三十年代という、「豊かでは無かったけれど、明日への夢があった。」時代に懸命に生きる人々の姿。
ってんだけど、昭和三十年代の良い所だけをすくい取って、「これがあの頃」って云われても、それは違うだろ!と私は思うわけですよ。こんなんで感動するのは、「プロジェクトX」観て「あの頃は…」と涙を流す程度のオジサマ方か、「これが昭和三十年代」と見事に勘違いしちゃう若者(これが一番怖い)ぐらいのものですよ。
「特撮を駆使して昭和三十年代の町並みを…」というのもどうも首をかしげざるを得ない。いや、非常によくできているとは思いますよ。けれども、「時代の臭い」というのか、そういう物という点では、とても(今NHKの衛星放送で再放送しているけれども)寅さん(「男はつらいよ」)の初期の作品(あれは時代が下るけれども)にはとても適わないと思うのですよ。例えばさくらのマニアックな白いハイソックスであったり。
ストーリーは至って陳腐。引き取った孤児を(なぜか?昭和三十年代だからこそ、あんなに簡単に他人の子を引き取って面倒見るなんて事はしないんじゃないかな?)育てる吉岡秀隆、その孤児が実はお金持ちの子どもで、(案の定)黒塗りの車で引き取られていくのだけど、結局その子どもはお金持ちの家を捨てて貧乏な吉岡の元に戻ってくる。涙々。
同じような戦後の孤児の話だと、小津安二郎の「長屋紳士録」(感想ページ)の方が遥かに良いですよ。たらい回しにされる子ども、幾ら邪険にされようとも、誰かにすがるより他ないのだから。
そこには、「男はつらいよ」と同じ様に、同時代の世話物としての現実感がある。
ストーリーとしては他にも色々エピソードがちりばめられているのだけど、その一つ一つに胡散臭さが付きまとっている。
ともあれ、この映画が「癒し」として現在の自分を消極的に肯定する機能は果たしているのだろう。
庭の草刈りをしていたら見つかった、みょうがの花、こんな花が咲くんだ。


「「時代の臭いをコピーできるのか?」(ALWAYS 三丁目の夕日)」への3件のフィードバック

  1. お久しぶりです。杉並のインです。お元気なようでなによりです。
    昭和30年、なんだか最近、はやってるのだそうですよ。
    3丁目、あまりにも胡散臭いわ、金もないわで観にいく気にならないけど。
    小雪が好きなら楽しいのかしら。
    思うんだれど。
    あの時代そのものが、今から考えるとなんかすごいエネルギーをもってたのは事実なのでしょう。最近の30年代懐古趣味っていうのも、詰まるところそのエネルギーへの憧れなのだろうけど。
    でも、あのエネルギーって、自分らの今の生活から抜け出したい、ってエネルギーであったとも思われます。より清潔に、より快適に、そしてより豊かにっていう。
    そしてそれは、こきたない路地裏だとか、ぶら下がる洗濯物とか、ボロ長屋とか、そういうものの否定にそのまま結びついて来たんではなかろうか。時代の当事者がそれを意識するとせざるとに関わらず。
    だから、その切り捨てて来た時代をいまさら持ち上げるのはなぜ? という疑問がひとつあり。
    さらに。
    当時の日常がそんなに輝いていたはずがないですね。輝いてないから、エネルギーが生まれていたはずでね。あのときにみんなが希望をもってたとすれば、それはむしろ新しい生活への渇望に近いものだったはずで。21世紀の今でいうところの「明日への希望」みたいな美しい語感で語られるものではなく、もっと即物的な、ギラギラしたものだったんじゃないか、とも思う。
    むしろ、今とは別の意味で世間がずいぶん世知辛かったんでないか。とても、憧れる気にはなれない。
    映画が新の書くような内容であったならば、それはあの時代を描いたものではなく、むしろ今を描いているものと見る方がよいのでしょう。
    反省なのか、ただの懐古なのか、あるいは両方か。僕たちはかつてこんな世界に住んでたんだ、という感じ、かも知れず、かむばっく古き良き時代、かも知れず。
    ただ、なんにせよ、読み取れるのは今の時代のニーズであって、あの時代ではあり得ない。
    だから、寅さんとくらべちゃいけねえ。それをいっちゃあ、おしめえよ。だって、寅さんが帯びる時代の空気はリアルタイムだもの。
    3丁目をリアルタイムと見るなら、比べても面白いでしょうが。寅さんのころ、大正10年を憧れるなんて話があったかどうか、疑問ですもんで。
    まあ、人間の記憶はどうしたって美化されるっていわれますし。ブームは、おかしな話ではありますがね。
    以上、立ち寄りついでにつらつらと。
    長文失礼。

  2. まあこれはあくまで僕の独断と偏見に基づく感想だから、あまりあてにされぬよう…
    イン君、お元気〜?(手賀沼の縁から)

  3. どうも。
    元気すよ。それなりに。
    君もお元気そうでなにより。
    沼。いいね。
    何か特別なもんがあるわけでもないのだが、歩くと楽しいのよね。

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