プリントの魅力について考える


前に一度行っていたのだが、もう一度観たくて、上野の国立西洋美術館に「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」を観に行った。
どんよりとした寒そうな北欧の曇り空(行ったこと無いけど)の、静寂の景色。
山手線で田町に行って、PGI (Photo Gallery International)へ。
川田喜久治写真展「遠い場所の記憶:メモワール1951-1966」
を観る。戦後の風景が淡々と。
古関さんのブログで「インクジェットプリントって凄い!」てな事が書かれていたのだけど、普通の銀塩プリントみたいで「どこがインクジェットなの~?」とメールしたら、「全部そうらしいよー」と。
確かに、プリントの他の面はきれいなのに、(トーンが)暗部にさしかかると、途端に針が振り切れたみたいにドーンと真っ黒になっちゃう。
「こういう物なんですか」とギャラリーの人に言ったら、同じ紙で焼いたトーンの豊富な絵を見せてくれたけれども、トーンカーブがリニアの様なヌメッとした印象で、暗部はそこそこ出てはいるんだけど、ガサガサしたような感じ。
生のプリントの魅力って、印刷物と違って暗部が真っ黒の様で、よくのぞき込むと実はそこに何かが立ち現れてくる様な、沼の底を見つめる様な物があると思うのだけど、これではちょっと。
インクジェットプリントの割には凄いって事なのかな?
川田喜久治さんの写真も、暗部が潰れている様で居てのぞき込むと実は薄くあって… というのだともっと作品に深みが出たと思うのだが。
所詮印刷物の延長の様な。
芳名帳を見てみたら、結構日芸写真学科の人達が来ていた(誇らしげに学校名を書くなよ)のだけど、これが良いプリントの基準の様に思われちゃうといけないよな、と思いつつ。
PGIに行く途中の芝浦の運河。


早い宅配便

築地のそば屋「さらしなの里」の穴子天もり
今日は某I社の関西の工場から、物件の写真と色を合わせる為のタイルが届く日だったのだが、
打ち合わせにも、日芸の卒展にも出かけるから家には居られないな。
なんて思って、目覚めの朝風呂に入り出てきたら玄関のチャイムが鳴った。
なんだろうと思って玄関横の流しの上の窓から首を出すと、クロネコヤマトのトラックが止まっていて、「宅急便で~す」。
配達の人は男性だったし待たせるのも悪いので、パンツ一丁のままドアを開けて荷物を受け取る。
「やけに早い宅配便だな」と思い時計を見ると、九時十分前。
数日前、柏のビックカメラで買ったDENONの五万円のスピーカー(こっそり自慢)を配達してもらった時も(別の会社だったけど)九時数分過ぎだったし、どうもわが家の地区は、
「どうせ家族ばかりでみんな朝から起きてるし、先に済ませてから他を配ろう。」
という地域になっているらしい。
ミッドタウンの富士フィルムフォトサロン日芸の卒展を観て、ついでにサントリー美術館でやっているロートレック展を観る。
凄い人で、絵が見えない。ザワザワとした喧噪の雰囲気を絵の中に描き込める人だなあと。
三月半ばまでやって、次はローランサンだそうで、こりゃまた混みそうだなあ。と思ったらこれは大阪の天保山だった。
-以下メモ-
MacOS10.4のSpotlightは、書類の文章の中身まで検索してくれる便利な機能だが、「プライバシー」という設定で、検索されたくないフォルダは検索対象から外してくれる。
しかし検索対象にしたくないフォルダ或いはそのフォルダが入ったフォルダの名前が半角英数字以外で始まる場合、「プライバシー」の設定は意味を為さず、検索されてしまう。これはMacOS10.4.11でも修正されていない。
検索結果に秘密のフォルダの中身が出てきてびっくりした。
お昼は打ち合わせ先近所の築地のそば屋「さらしなの里」の穴子天もり。


庭園美術館

東京都庭園美術館の庭のバラ
昨日は友人を誘い、目黒の東京都庭園美術館で「モダン日本の里帰り 大正シック ホノルル美術館所蔵品より」(7月1日まで)を観た。
流麗な線と、落ち着いた破綻の無い綺麗な構図が心地良い。建物も心地良いのは言うまでもない事。ここに来ると、いつも、物を観る時の空間という事を考えさせられる。
雨の上がった庭に出ると、ばらが満開だった。


手袋はLだった


年末から行こう行こうと思いつつ、気が付いたら明日までだったので、川崎市民ミュージアムに「横山光輝の世界展」を観に行った。
「鉄人28号」や「魔法使いサリー」「伊賀の影丸」「バビル2世」「三国志」などたくさんの作品を残し2004年に亡くなった漫画家、横山光輝(みつてる)(ファンサイト)。その初めての回顧展。様々な時代の作品をかいつまんで見る事ができて面白い。数十年も活躍している(していた)一人の漫画家の作品をデビュー当初から見ていくというのは、こういう機会でも無ければまず無理。
少年時代「三国志」等横山作品にはまった私としては、懐かしい世界。生原稿を見て、改めてその流麗な線に感心。
帰りの東急東横線、繋ぎ服でヘルメットをかぶった人が乗っていたから何かと思ったら、次の駅での停車中、脚立を出して組み立てて、チカチカしている蛍光灯を持っていた蛍光灯と取り替えてしまった。皆が唖然としている間に脚立を畳んでその人は去っていった。
終点渋谷に着いて降りたら、電車の先頭を運転手さんみたいな格好をした人がハンディカムみたいなビデオで写していた。東急は謎が多い。
原宿にて、デジカメwatchの記事で見て、この時期の撮影には欲しいと思っていたアクシーズクインの親指と人差し指と中指だけ出る手袋を買いに原宿へ。訊いてみたら結構この製品は方々の大きなスポーツ用品店にあるらしいが、在庫やら潤沢にあるのはアクシーズクインに問い合わせて教えてもらった原宿通りにあるこの店「ノルブリンカ」らしい。実際にはめてみたら、あったのはLサイズ。服はMサイズなのに、手袋はLサイズらしい。(XLサイズでは少し大きくて、Lサイズだと少し小さかった。結局Lサイズに。)
美術館の前に停まっていたバス。


美術館と煙を見た


前も行ったのだが人が多かったので、再び上野の国立博物館に『プライスコレクション「若冲と江戸絵画」展』を観に行ってきた。半世紀ぐらい前に、日本人には見過ごされていた江戸時代の絵を多く集めたアメリカ人「ジョー・プライス」さんのコレクションなのだけど、伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)の作品を集めた展示室に人が集まっていて、他は結構閑散としている。明らかにこの展覧会の趣旨?を忘れているな。
竹橋の国立近代美術館で「モダン・パラダイス展」なる展示をやっているのを見て、行こうと思い出てみたら、黒い煙がモクモク… 大きくて近そうだったので何かあそこら辺の建物でも燃えたのかな?と思ったが、家に帰ってニュースサイトを見回してみても何も出ておらず。
「モダン・パラダイス展」は、その名の通り近代美術の作品を一堂に会した展覧会で、パラダイスという位だから要はごちゃ混ぜなのだが、モネやゴーギャンの西洋絵画あり、藤田嗣治の戦争画あり、現代絵画あり、日本の写真作品あり、それらを時代というくくりで無理矢理にでもまとめてしまったのは、面白かった。
途中、見張りで座ってる女性が年配の客に「写真作品の前に書いてある『ゼラチンシルバープリント』って何?」と訊かれて答えに窮していたけれども、要はフィルムを使ったフツーの白黒写真って事です。今はデジタルだとかインクジェットだとか色々あるからね。以前ヨドバシカメラの写真用品売り場でもそんな事を訊いている客が居て店員は答えに窮していたけれど、
これまではアナログ写真が「普通」であったのだけど、今やそれにもっともらしい名前を付けなければいけない時代になったのです。残念ながら。


駒沢の画廊にて

というわけで、豊洲で一仕事終えた後、知り合いの荒井経さんの個展(日本画)を観に、駒沢(世田谷区)の「潺画廊(せんがろう)」に土曜日行った。(すぐに書くつもりだったのだけど月曜日になってしまった)
潺画廊(せんがろう)
この画廊は、世田谷の住宅街にあるちょっとした邸宅といった趣で、平屋の日本家屋の部屋を巡ると、そこに絵があるというような空間。
来客中だったようなので、別の部屋でボーっとする。
潺画廊(せんがろう)
人には色々な幸せがあると思うけど、絵の前でそれを独り占めにしてボーっとするなんて、何とも気持ち良いもんだ。


弥生美術館

併設された喫茶店「港や」の二階
昨日東大の裏の「弥生美術館(やよいびじゅつかん)」(東京都文京区)に行った。「挿絵画壇の鬼才 岩田専太郎展」(3月28日まで)を観るために。
新聞で見て始めて行ったのだが、「竹久夢二美術館」なる物も併設されていて、さぞかし大きい美術館かと思いきや、小さな三階建ての洋館で、内部で繋がってもいる左右の棟が、二つの美術館。
岩田専太郎は、挿絵画家として新聞の連載小説などで第一線を走り続け、1974年、73歳で死去した人物。
紙面の一部の小さな空間で、殆ど濃淡は無く、墨か紙かの世界で周囲の文字に埋もれる事無く、目を引きつける力を持った、切り詰めに切り詰めた小さな絵の世界。
併設された喫茶店「港や」の二階。


リズム

東京都写真美術館にて「植田正治:写真の作法」(2月5日まで)を観た。
早稲田の穴八幡宮に「一陽来復(いちようらいふく)」の御札を買いに行くついでに、昨日知って行った。
植田正治は昔好きで写真集も二冊ほど持っていたのだが、お決まりの砂丘の演出がイヤになって、最近は特に興味も無くなっていた。
今回も砂丘や戦前の写真が半分を占めていたが、それほど演出っぽく無く、普通の風景の中に氏のリズムを発見して、人物を配したような写真(今回の展示で云うと右奥の1/4ぐらい)が面白かった。場を離れ難く、何度も観てしまったから会場の人や受付の人には変に思われたかもしれない。


須田国太郎展

一昨日の金曜日、数日ぶりに都内に出たので、I社への納品がてら、竹橋の国立近代美術館に行き、「須田国太郎展」を観た。(3月5日まで)
絵は大体黒い部分が多くて、本物以上に(おそらく)コントラストが高い状態なのだが、その陰翳が、様々な色を煮詰めた様な黒で物凄い。
会場には諸処の休憩する椅子に(何度も云ってる気がするけど、こういう部屋の真ん中にしつらえられた椅子に座って絵を眺めるというのは至福である。)、この展覧会の図版が置いてあって、その中の印刷物と本物を比べられるのは面白い。
印刷物は、絶対的な黒と白の指標が無い(どこが一番の黒だか白だか分からない)から、絵の中で一番黒い部分、白い部分を、それぞれのどん詰まりとしている様で、その「どん詰まり」近辺(殆ど真っ黒に近い様々な色)を観る事はできない。
また白の部分も同様で、実際にはもっと柔らかいフワフワした絵(こういう絵もあった)は、内容を失っているようだった。


最悪上野行

風邪も治った(と自分では思いこんでいた)ので、上野の都美術館に、「プーシキン美術館展」を観に行った。先週行ったら(平日の午前中にも関わらず)混んでいて、ろくに観ることができなかったので。
三時頃行ったら、平日にも関わらずこの間にも増して凄い人。入るのに30分待ちだとか。
確かに内容は濃い。どっかで見たような絵がごろごろあったけど、何か少し前に流行った、どっかで聴いたCMなんかの曲を集めたコンピレーションCDみたいな…(僕も買ったけど)
仕方が無いので横の国立博物館でやっていた「北斎展」へ。こっちも混んでいたけど、「プーシキン…」程では無し。
ところがここでお腹の急降下!三度もトイレに駆け込んで、北斎を観に来たんだかトイレの壁を見に来たんだか…
やっぱり家でじっとしてれば良かった。少し良くなるとすぐホイホイ遊び出すから。
北斎、凄かったです。快活な線と鮮やかな色と。負け惜しみ云う訳じゃ無いけど(泣)。
というわけでいつもの北柏の喫茶店「Calla(カラー)」で暖かいお茶をすすっております。夕飯もここですませて寝る…